【北米市場の現実】抹茶ブームのその先にある“輸出飽和”とは?
「MATCHA LATTE」「MATCHA PROTEIN」「MATCHA DESSERT」——
アメリカやカナダのスーパーやカフェで、抹茶はすっかり“市民権”を得たように見えます。
一見すると順風満帆に見える抹茶輸出ですが、現地ではすでに“飽和状態”の兆しが見え始めています。
今回は、北米市場における抹茶ブームの実態と、今後の展望について深掘りしていきます。
ブームの背景:なぜ北米で抹茶が広がったのか?
まずはこの数年で抹茶が北米で急速に広がった背景を整理してみましょう。
- 健康意識の高まり
抗酸化作用、緩やかなカフェイン、ダイエット効果などが注目され、緑茶の一種としてヘルシーなイメージが定着。 - 日本文化へのリスペクト
アニメ・寿司・禅などの影響で、「日本らしい」ものへの関心が高まり、その流れで抹茶も浸透。 - Instagram時代の映え要素
鮮やかなグリーンは視覚的にインパクトがあり、健康とビジュアルを両立できるスーパーフードとして人気に。
こうした追い風を受け、現地ブランドも続々と抹茶商品を開発。Whole Foods、Trader Joe’s、さらにはスタバまでが取り入れ、一大トレンドとなりました。
現地の“抹茶飽和”のリアル
しかし2023年以降、北米における抹茶の成長には「鈍化」の兆しが見え始めています。
主な課題:
- 市場に製品が溢れ、差別化が困難に
オーガニック、セレモニアルグレード、京都産など各社が打ち出すものの、バイヤーや消費者にとって違いが伝わりにくい。 - 価格競争の激化
輸出競争により、卸価格の下落と利益率の圧迫が深刻。中国産の“Matcha-like powder”との競合も。 - 一過性の購買傾向
「一度買ってみたけどリピートしない」という層も多く、継続的な需要に結びつかないケースも増加。 - 現地企業の自社ブレンド増加
Matcha.com、Jade Leaf、Rishi Teaなど、現地企業が独自ブランドを築き、日本からのOEM供給から脱却する動きも進んでいます。
これからの北米市場で勝ち残るには?
飽和状態に近づきつつある北米市場。
それでも、日本の抹茶が“選ばれ続ける”可能性はあります。
今後のカギとなる戦略:
① ストーリー重視のブランディング
例)
- 「京都・宇治の百年農家が守る伝統製法」
- 「茶道の精神を日常に取り入れる」
- 「抹茶の“静寂”がもたらすマインドフルネス」
単なる健康食品ではなく、“ライフスタイル”の一部として提案することが求められています。
② 体験を伴うマーケティング
- 現地での抹茶体験イベント・茶道デモンストレーション
- 飲み方や使い方を紹介するSNS動画・レシピ配信
- 英語字幕付きの“抹茶文化”YouTubeチャンネル
抹茶を「知っている」から「使いこなす」へ導くサポートがカギ。
③ ローカルパートナーとの連携
- 現地インフルエンサーやシェフとのコラボ
- ヴィーガン/グルテンフリー市場との親和性を活かした共同開発
- 日系企業との販路連携(例:MUJI USA、日系スーパー)
最後に:いま問われるのは「売る力」より「育てる力」
北米の抹茶市場は、確かに広がりました。
しかし今後求められるのは、“数を売る”というよりも、ブランドとして“文化を根づかせる”視点です。
抹茶が北米に根付き、再び成長するには、
「おいしい」や「ヘルシー」を超えた価値=“心を豊かにする緑の一杯”をどう伝えるかが問われているのです。